農家は減っていいのか?現状と未来を考える

日本の農家は減少、高齢化しています。
「このままでは日本の農業、食糧安全はピンチだ。」という意見を見聞きした人は多いのではないでしょうか?
実際に不安に感じている人もいると思います。
では実際に農家が減っていることは問題なのでしょうか?
私はそうは思いません。
具体的な数字を元に現代の農業の現状と未来について考えていきます。
1. 農家の減少は本当に問題なのか?
農家の数の推移
2020年の農林業センサス(5年に一度の統計調査)によると農業をメインの仕事にしている基幹的農業従事者は136万人でした。

農家の数で言うと2010年が168万戸で2020年が107万戸です。
この農家の急激な減少だけを見ると不安を抱く気持ちもわかります。
しかしもっと詳しくデータを見ていくと違った側面が見えます。
売上規模別の農家割合
販売農家107万戸の内、約8割は売上500万以下です。
売上ですのでそこから経費を引くと農業だけでは生活できない農家です。
言葉を選ばず言うとプロの農家ではないのです。
全体の8割がセミプロ、趣味の農家ということになります。
この8割の農家の農業産出額はわずか13%です。
全体の1割の農家が約8割の農業産出額を生み出しています。
そして売上3000万を超える農家の数は増えているのです。
全体の農家の数の減少だけを見て「日本の農業はピンチだ。」というのはあまりに浅い考えです。
2. 日本の農業が抱える課題
進まない農地集約
農家の数が減り、限られた数の新しい農家がたくさんの面積を栽培し日本の食を支えていくためには農地を集約していく必要があります。
農地をまとめ、作業性の良い畑で大型の機械で効率よく栽培していくことです。
日本の農地の多くは細かく所有者が分かれています。
このため農地を集約するには、数多くの所有者と交渉し借りたり買ったりする必要があります。
これには大変な労力が掛かります。
高齢化した農家には畑への思い入れがあったりします。
「代々守ってきた農地」という意識があるようです。
これを若い農家が自分の生活しているコミュニティーで高齢者とやり取りするのはかなり難しいです。
これは日本の農家において大きな問題だと感じています。
農地転用
耕作されている農地の面積はピークの6割程度まで減っています。
耕作放棄地の問題もありますが、多くは宅地、道路、工場などに転用されています。
農業を行わなくなった高齢化した農家もいつか子供が帰ってきて家を建てるかも、道路や工場などが出来て高く売れるかもとなかなか手放しません。
これは次世代の農地を集約させたい先進農家にとって足かせです。
3. 未来はどうなる
日本の農業が成長していくためには、先進的な農家への農地集約が必要不可欠です。
そのためには経営が成り立たない弱い農家の淘汰とその農地を手放すことです。
これは他の産業では当たり前に起こっていることです。
この問題は根深く簡単には解決されませんが、農家が減っているということはむしろ農業が発展することに進んでいると言えるのではないでしょうか。
行政は既存の零細農家の延命のための政策ではなく、先進農家への支援や農地政策に力を入れなければなりません。
それを農家や一般消費者も理解し見ていく必要があります。
4. 農業の未来を考えるための書籍紹介
(1) 『農家はもっと減っていい』 (久松達央 著)
今回の記事を書くにあたり参考にさせてもらった書籍でもあります。
農家の数が減ってもいいと言える根拠や日本農業の問題の本質についてデータを元に書かれています。
ご自身が経営されている大淘汰時代の小さくて強い農業についても詳しく書かれています。
大規模農家も新規就農者も必ず読むべき一冊と言えるでしょう。
農業全体の事を理解せずに自分の戦略は決まりません。
5. まとめ:農業の持続可能な未来に向けて
農業が抱える問題は簡単に解決できる問題ではなくとても根深いです。
農家が減っているから政府はもっと農家を支援しろみたいな浅い考えでは何も解決しません。
データから農家の減少の本質を読み取り、誰を応援するべきか、何が問題なのかを見極めていく必要があります。
この記事を読んで興味を持った方はぜひ久松さんの書籍で考えを深めてみてください。